Production Notes

実在した“闇の選挙請負人”に
インスパイアされた
政治エンターテインメント

ビョン・ソンヒョン監督は『キングメーカー 大統領を作った男』で「無骨ではなく洗練された選挙の話を描いてみたかった」と語っている。映画冒頭でも「実話をもとにしたフィクション」と書かれているように、主人公のキム・ウンボムとソ・チャンデには実在のモデルがいる。

キム・ウンボムは韓国の第15代大統領の金大中、そしてソ・チャンデは金大中陣営の選挙参謀だった厳昌録の実人生がもとになっている。厳昌録は1961年から71年の間に金大中の選挙運動のダーティな奇策やゲリラ戦術を主導し、「選挙の鬼才」「狐」などとあだ名された人物だった。

監督は、「目的と手段についての信念が異なる二人の物語を通じて、誰もが向き合える疑問を投げかけたかった」と付け加えている。実際、劇中で描かれているソ・チャンデの策略の多くは実際に行われたものであり、キム・ウンボムの選挙演説も、金大中が行った演説を再現しているようにも思われる。

毒をもって毒を制すソ・チャンデの強引な選挙戦によってキム・ウンボムは当選を果たすが、新しい国づくりを目指すウンボムの理想は、やがて2人の二人三脚を終わらせることになる。同じ夢を見ていた2人の決別が不可避だからこそ、観客はそれぞれの理念や信念の是非について、考えずにはいられないはずだ。

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韓国を代表する名優2人が 正反対の政治家像を熱演

剛直な人柄の政治家キム・ウンボムを演じたのは、ビョン・ソンヒョン監督の前作『名もなく野良犬の輪舞』では裏街道のヤクザ者を演じていたソル・ギョング。実際の政治家の演説シーンを参考にしながらも、彼ならではのキャラクターを構築するために絶えず悩みながら試行錯誤を重ねたという。

またモデルとなった金大中をイメージして方言を身につけたり、シーンに合わせて体重を増減させたりと細かな努力を惜しまなかった。本人が印象深かったシーンとして選んだのは、キム・ウンボムが議事妨害のために長々と演説する場面。5時間にわたる演説を数秒で見せる演出のため、映画の中では演説の声は聞こえないにも関わらず、ソル・ギョングは演説文をすべて暗記してきたという。

選挙戦略の天才ソ・チャンデを演じたイ・ソンギュンは、第92回米アカデミー賞®で作品賞など4部門に輝いた『パラサイト 半地下の家族』に出演しており、世界を夢中にさせた同作の後にスクリーンに復帰する作品としても話題になった。ソ・チャンデは過程よりも結果を重視する価値観の持ち主であり、記録映像などを参考にしたり、ビョン・ソンヒョン監督と話し合いながら複雑な人物像を作り上げていった。監督は「イ・ソンギュンさんのおかげでソ・チャンデをより洗練されたキャラクターとして誕生させることができた。おかげで重くなりそうな部分も軽快になった」と演技を絶賛。「同じシーンを何度か撮っても絶対にエネルギーが落ちることがない。おかげで僕も新たにできることの可能性が広がった」とイ・ソンギュンの情熱に感謝を表している。

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監督が絶大な信頼を寄せる スタッフワーク

ビョン・ソンヒョン監督は、主演のソル・ギョングだけでなく、メインスタッフも前作『名もなき野良犬の輪舞』の顔ぶれを再集結させた。チョ・ヒョンレ撮影監督、イ・ギルギュ照明監督、ハン・アルム美術監督、キム・ホンジプ&イ・ジニ音楽監督、チョ・ヒラン衣装担当など、同じチームで再び仕事をするため、全員のスケジュールを合わせて撮影開始のタイミングを決めるほど、チームへの信頼度は高かった。

1960~70年代の選挙戦の特色を再現するために、撮影と照明には強いこだわりが必要だった。ビョン・ソンヒョン監督とスタッフは、撮影に先立ってプリビジュアル作業を行い、5か月をかけて2度の絵コンテ作業を行うなど、事前作業から余念がなかった。

撮影時にはヴィンテージレンズが使用され、10年にわたる物語であることから、それぞれの時代時代に合わせて違うフィルターをかけた。古さを強調するためにシーンによっては8ミリフィルムのカメラも導入された。また表舞台に出ることがないソ・チャンデの心理をビジュアル化するために、選挙事務所のシーンではソ・チャンデが影の中に閉じ込められて見えるように照明プランが組まれ、俳優の繊細な演技にさらなる深みを加えている。

美術チームは当時の写真を綿密に調べながらも、少しずつ変化球を入れて新しいものを創り出すことに注力した。実際に1960~70年代の小道具を博物館や所蔵品から探すには限界もあり、木製の家具は腐敗してなくなっているか、使える状態ではないことがほとんどだったため、小道具の80%以上は一から制作されたという。

キム・ウンボムの選挙事務所は物語の推移に合わせて何パターンも登場する。彼の政治的な成長過程が垣間見られるように、倉庫のような空間から始まり、大統領選候補に指名されてからは都会的なイメージでデザインされた。一方で政権を握る共和党が集まる場所は、「ブラックコメディの要素を加えたい」というビョン・ソンヒョン監督の演出意図から、享楽的で権威的な過剰さを強調してデザインするなど、時代という枠にとらわれない大胆なアレンジが作品独特のルックを生み出している。

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